マンション売却の教室

第4話:サラリーマン大家さんからの相談ごと

サラリーマン大家

こんにちは。サラリーマン大家の良波直哉です。
私はサラリーマン大家としてマンション経営を行うかたわら、マンション経営の情報を公開するための「切磋琢磨サイト」を運営しています。そしてマンション経営の知識をより広く深く学ぶため様々なセミナーやイベントに参加し多くの方々と交流を持つよう努めています。このような場で出会った方の中には、私がサラリーマン大家であることを知った同じサラリーマンの方からマンション経営についての質問を受けたり、「今度相談させて下さい」と言われ後日お会いして話を伺ったりすることがあります。
今回のコラムでは、このようなサラリーマン大家さんやその予備軍の方からの良くある質問や相談ごとをご紹介したいと思います。

■ マンション経営のよくある質問

サラリーマン大家

まずは私が多く受ける質問からサラリーマン大家さんの多くがどのような疑問を持ち、その疑問に対しての私がどのような説明をしているかをご紹介します。

【マンション経営そのもの一般についての質問】

・マンション経営は儲かるのか
 やはり最も気になるのはこの点のようです。この質問に対しては「きちんとやれば儲けることができます」と答え、そして儲けるためにはマンション経営に真面目に取り組む姿勢と経験が必要ですが、中途半端な気持ちで始めると痛い目を見るかもしれません。

・マンション経営は大変なのか
 サラリーマンとマンション経営の二足の草鞋がどのぐらい大変なのかを知りたいという質問です。これはマンション経営を始めてみたいという気持ちの表れで、この質問をする方は真剣に検討中ということなのだと認識して回答するようにしています。
これについては、購入するマンションを間違えなければ管理は管理会社がやってくれるので大変なことはないですが、間違ったマンションを購入してしまうと、空室対策が必要になったり家賃競争に巻き込まれてしまう恐れがあります。

・東京オリンピックの影響は
最近よく聞かれるようになったのがこの質問で、多くの方がこのように考えているようです。
- オリンピック開催に向け多くの人が集まり東京都の人口は増えている
- オリンピックが終わると人口は減るので、2020年からマンション経営は大変なことになる」

この質問の答えには賛否両論あるかと思いますが、私は専門家ではありませんがという前提で、回答するようにしています。
 オリンピックのために東京へ集まってくる方は大きく2つに分類されます。ひとつは建設関係で地方からの出稼ぎ的な方です。このような方の多くは建設会社の方で住居を用意することが多いのでマンション経営に大きな影響を与えることはありません。 もうひとつは建設関係以外のサービス業などで、比較的若い方が多くオリンピックが終わったあとも東京に残る方が多いのではないかと考えられます。東京オリンピックが終わったからといって地方に仕事が増えるわけではないからです。このためこれらを総括するとそれほど大きな影響は出ないと私は現時点では見込んでいます。

・今はマンションの買い時・売り時どっち

サラリーマン大家

これも東京オリンピックの開催に絡みよく聞かれる質問です。これについても専門家ではないですがという前提でこのように回答しています。
まず影響が大きいのが銀行融資です。銀行が容易に融資する場合は、不動産会社も売れる可能性が大きくなるため積極的に頑張り、購入を検討する人が増えるためマンション価格が上がる傾向となり「売り時」と言えるかと思います。
次は景気による影響です。景気が悪くなるとお金の循環が悪くなるため多くの経済活動に影響が出ます。しかし、新築のマンションには景気のタイムラグがあり、計画から完成まで1年からものによっては数年を要します(マンション規模にもよります)。このため新築で売りに出ているマンションの価格には、数年前の建築材料費や人件費が反映されるため、これらの価格が安い時期に建て始めたマンションは比較的安い価格で販売されることがあるそうです。しかしそれは素人が判断できるものではありません。 このような理由から、景気の影響からタイミングを考えても答えは出ないので、その労力は別のところに使った方が良いというのが私の出した結論です。

【購入検討中または購入済みの方からの相談】

サラリーマン大家

・前向きに購入を検討されている方
実際にマンションの購入を考え真剣に取り組んでいる方とお会いし、お話しを伺うことがあります。 このような方は、前向きな姿勢で夢と希望に溢れているという感じで、私も元気とやる気が湧いてきます。このような場合、購入するマンションをどうやって選べば良いのか、購入のためには何をすればよいのかといった具体的な話をしていますが、この内容をご紹介すると長くなって本論から逸れてしまいますので今回のコラムでは割愛します。

・知識の向上のみに注力している方
マンション経営を始めたいと考えた方はマンションの購入に向けた勉強をされています。当然ですがマンション経営を始めたいのであれば勉強は必要です。しかし、中には勉強することが目的となりマンションの購入よりも自分の知識を向上させることに注力されているような方も少なくありません。 このような方とお話しすると、「私の考えはそうではなく」と自分の持論を語り始めたり、売りに出ているマンションの情報を参考情報として提示しても「私の知り合いのマンションはもっと利回りが高いです」といった答えが返ってきたりします。このような方はマンションを購入するための話をしたいのではなく、自分の知識がどれだけのものかを試したく、相手との知識比べを楽しんでいるようにも思えます。マンション経営に興味を持たれる方には、このような方は案外多いのです。


・購入を検討されている方に伝えたいこと
初めてのマンション購入を検討している方は、このタイミングでどのような勉強をするかでマンション経営のスタートの位置が大きく変わります。良いマンションを購入すると比較的楽に収益を得ることができますし、そうではないマンションを購入してしまうとやり直すために何年もかかってしまう場合もあります。ではマンション購入前にどのような勉強をすべきか。私が是非学んでいただきたいと思っているのは経験者の考え方と実体験に基づいた生の声です。これはどんなマンションを購入したのかというようなことではなく、マンション経営をしている方の「どのように考えてそのマンションを購入したのか」、「購入してどうなったのか」、「問題はあったのか、あったのならどのようにして乗り越えたのか」といった生の声です。そして、このような生の声が聞けるマンション経営者とのつながりを持つことが、マンション経営を始めるにおいて何よりも大事なことなのです。


■ 収支が良くない方からの相談

あまり多くはありませんが、マンション経営がうまくいかず収支が良くないという方からの相談を受けることがあります。

サラリーマン大家

・競合マンションが多く家賃競争に
一部上場企業の40代サラリーマンの方で、営業マンから都内の大学近くのワンルームマンションを勧められ、「大学生向きの部屋なので入居希望者が多く安心してマンション経営ができます」という言葉を信じて購入したそうです。しかし購入から1年もたたないうちに退去となりその後は空室が続き、調べてみると実は購入したマンションの周辺には競合するワンルームマンションが多く入居者の奪い合いになっていたそうです。そして家賃を下げることでやっと入居者が決まったものの毎月のキャッシュフローは赤字になってしまったとのことでした。
一般的に入居者が決まらない場合は、内装や設備のグレードを上げるなど家賃を下げない対策を講じるべきですが、その方の場合は銀行とのローンの利率を下げる交渉に多くの時間と労力を費やしていました。そしてその交渉はとある大家の会のような集まりでやり方を聞いたとのことでしたが、詳細を聞くと銀行がもっとも嫌がるクレーマーのような交渉の仕方でした。そこでまずは入居者を決める努力をすべきとアドバイスしたところ、後日に他の方にお願いすることにしたと連絡があり、これを最後にこの方と連絡を取ることはなくなりました。

・税金の還付金が前提でマンションを購入

サラリーマン大家

友人を介して相談を受けた近畿地方に住んでいる20代の女性で、この方も営業マンに勧められるままに東京都内で入居中のマンションを購入した事例です。しかし入居中でありながら収支は毎月マイナスとなっているので、騙されたのではないかという相談でした。この方の場合、相談者が離れているのでまずは購入時の打ち合わせ資料や現在の賃貸契約書・レントロールなど一式を送ってもらい内容を確認しました。営業マンの説明資料では確かに入居状態なのに手取りは毎月マイナスだが、マイナスにすることで税金の還付金が得られ、年間の収支をプラスマイナス0にでき、ローン残高は減っていくという内容でした。しかし税金の還付金を記載しておきながら、不動産取得税や固定資産税、都市計画税といった支払う方の税金の説明はありません。都合のいい点ばかりを説明し、不都合な事実は割愛されています。相談者の方は事前にこの説明を受けた上でマンション購入の契約をしているので、自己責任と言えばそれまでですが、初めてマンションを購入する方にプロである営業マンがこのような説明をしているのは問題だと思います。

そして何よりも気になったのは融資が「住宅ローン」となっていたことです。通常であれば近畿地方に住みながら都内のマンションを住宅ローンで購入することはできません。私もこのような住宅ローンを使用したマンションの購入を勧められた事がありましたが、その時は「マンションの管理会社と組んでいるので銀行にばれることはありません」との説明でした。もちろんこの話はお断りしました。 そして相談者からもらった資料にあるマンションの管理会社をネットで調べてみると、マンションを販売した会社のグループ会社でした。
このことを相談者にお伝えしようとしたところ相談を仲介した友人から「相談者は投資サークルに加入しておりこれ以上かかわりたくない」との連絡が入りました。マンションのマイナスを解消するため仮想通貨に乗りだし友人も誘われたのだそうです。このため調べたところまでを相談者に伝えるよう依頼し私も手を引きました。

・自分の考えを持たないと危険
収支が良くない方からの相談事例として2人の相談者の実例をご紹介しましたが、どちらの方も背後に相談相手がいてその方を信頼して行動しているようです。私もはじめて購入したマンションが空室になってしまいマイナス収支が数か月続いたときは、精神的に疲弊し出会ったばかりの人にも藁にもすがる思いで相談をしていました。その結果、恥ずかしながら何人もの人に騙されもっとひどい状況に追い込まれていきました。振返って考えると、その頃の私は自分の考えを持っていなかったため営業マンに勧められるままにマンションを購入し、相談相手の言うがままに行動してしまっていました。

・相談するなら失敗した人に
マンション経営のもっとも難しいことは「不動産会社の選び方」、「相談できる方の見つけ方」だと思っています。どこの会社でも良いし、相談できるなら誰でも良いということなら話は簡単ですが、この2つは大事なポイントであり大変難しいことなので時間をかけてつながりを作っていくべきです。特に相談できる方を見つけるのは難しく、どのような方が良いのかは一概には言えませんが、少なくともマンション経営についての知識を語る方ではなく、自分の経験を教えてくれる方が良いかと思います。そして、その経験は「毎月どれだけの収益を出している」、「マンションを何室持っている」という成功談よりも、「こんな大変な事になって、こうやって乗り越えたんだよ」という失敗した方の方が良いかと思います。失敗を乗り越えるためには懸命に考え努力し行動するからです。

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・収支が良くない方へのアドバイス
収支が良くないからといって他の方法での回収を考えるのは良くない方法です。まずは自分のマンションとしっかり向き合って考え対策を取ることが大切であり、間違いなく最善の方法です。また誰かに相談する場合も収支を改善させるための相談だけにしましょう。マンション経営は問題をそのままにしても良いことはなく、時間とともに悪化していくからです。


■ マンション売却の相談

サラリーマン大家

・売却したいという気持ちの背景
相談する方の多くはマンションを購入して5年~10年ほどの方です。マンションをこのまま持ち続けると経年劣化により建物の老朽化が進みますし、競合するマンションが建ち始めているため今後は家賃が下がるのではないかという漠然とした「持ち続けることへの不安」を持っているのです。このため退去となったら空室状態が長引くかもしれないし、次も同じ家賃を取れる保証もないため入居中のうちに売ってしまいたいという気持ちのようです。

・売却に対する不安
売却を決断しても実際に行動に移すのはなかなか難しいようです。これは営業マンに勧められるままにマンションを購入し辛い思いをしているため、売却も同じようになるのではないかという不安があるのでしょう。(マンションを購入した不動産会社が信頼できるのであれば売却も同じ会社に相談するはずですから。)そして相談者の方の多くが持っているのは「安く売られてしまうのでは」という不安です。よく「持っているマンションの価格の相場が知りたい」とう質問を受けますが、質問の背景を踏み込んで伺うと売却の価格に不安を感じていることが多いのです。

・売却を依頼する不動産会社
相談者の方がマンションの価格と同じように悩んでいるのが、「売却をどこの不動産会社に依頼するか」ということです。そのマンションを購入した会社には頼みたくないし、他の会社ともつながりがない。マンションを購入するためのセミナーがたくさん開催されていたが、売却目的のセミナーは少なくセミナーで知り合った会社は避けたいという気持ちもあるようです。

・売却についてのアドバイス
多くの方が「売却」を重く感じすぎていると思います。皆さん売却を依頼したらすぐに売れてしまうと不安に思っている方が多いようですが、心配しなくてもよほど安い価格にしない限り簡単に買い手はつきません。また売却を依頼する会社も売れるまで付き合う必要はありません。売れなければ別の会社に替えても良いのです。
売却についての私のアドバイスは、次回のコラムで詳しくご紹介しますが、試しに売却を依頼してみるのも一案だと思います。


■ 持ち続けるべきか売却すべきか

サラリーマン大家

購入したマンションをこのまま持ち続けた方が良いのか、思い切って売却した方が良いのかという相談は、私が受ける中でもっとも多い相談です。つまり持っているマンションをどうしたら良いかという相談です。そして相談される方は収益が良くなかったり、売却すると損失が出てしまう方が多いのです。

・相談者が本当に相談したいこと
「持ち続けるべきか売却すべきか」という相談をする方は、相談にくる前から心のうちでは「売却」で決まっていることが多いようです。ではなぜわざわざ相談にくるのでしょう。それは売却するという最終的な決断を自分で下すことができず、誰かに背中を押して欲しいと思っているのです。それも自分の話を聞いてもらった上で「それなら売却した方が良いですね」という言葉を貰い自分を納得させたいという気持ちがあるようです。

・持ち続けるべきか売却すべきか
マンションの状況を最も良く分かっているのは相談者自身です。いくら私が相談を受けて話を聞いたとしても購入してから現在に至るまでの状況のすべてを把握している相談者の方にはかないません。そんな相談者の方が「持ち続けるべきか売却すべきか」と思っているのであれば売却に向けて動き出すべきだと思います。ここで気を付けて欲しいのは「売却する」ではなく、売却に向けて「動き出す」ということです。すぐに売却しようとすると購入した時と同じように営業マンに言われるままに話が進んでしまうかもしれないので要注意です。

・売却に向けて動き出すタイミングは
サラリーマン大家さんの中にも「今はマンション価格の相場が下がっているから」、「マンションの売買のタイミングを見計らっている」と言う方がいます。私はマンションの相場については専門ではありませんが、売却に向けて動き出すなら少しでも早い方が良いとアドバイスしています。なぜなら、そもそもマンションを持っているからには売却について知っておくべきですし、いつ売却のタイミングがくるかはわからないので、その時になってから「どうしよう」と思っても遅いのです。そしてマンションは何もしないと経年劣化が進み、家賃が下がったり修繕費が増えたりすることが予想されます。家賃の低下はマンションの売却価格に大きく影響します。家賃が少し下がっただけでも売却価格は大きく値下がりするのです。つまり、売却に向けての準備は売却する/しないにかかわらず早い方が良く、「持ち続けるべきか売却すべきか」と考えた時が、売却に向けて動き出すベストなタイミングなのです。

サラリーマン大家

・売却に向けてやるべきこと
マンションの売却に向けてやるべきことは、まず現在の収支をきちんと把握することです。家賃がいくらで、管理費や費用がどれだけで年間の収支はどうなっているのか。家賃の銀行口座を何年も確認していない方も珍しくはありませんが、この収支を把握しないとマンションを売却する際に損益どちらが出るのかすらも分かりません。
そしてもうひとつは、ローン残高の確認です。こちらもほとんどの方は把握されておらず、10年ぶりに確認し、残高が減っていることに驚いている方もいました。 「年間の収支」と「ローン残高」は、マンションの売却価格の設定に重要なものなので、事前に確認しましょう。

・持ち続けるべきか売却すべきかのアドバイス
持ち続けるべきか売却すべきかの相談に対しては、「持ち続けるための対策と売却を同時並行で行う」ことをアドバイスしています。「持ち続ける」と「売却」は真逆のように思えますが、それぞれ必要な対策は、実は同じ事なのです。
持ち続けるためには家賃の低下や空室への対策が必要であり、室内の内装や設備のグレードアップが必要です。これにより現在の家賃をキープする、もしくは更なる家賃アップを目指すことが、売却価格に良い影響を与えるのです。
具体的な考え方や対策については、次回のコラムで詳しくご紹介しますが、「持ち続けるか売却か」の二者択一ではなく、「持ち続けても良い」、「売却しても良い」という状態に持っていくのが最善の策なのです。


■ 相談される方へのアドバイス

サラリーマン大家

相談される方の多くは、「何をどうすれば良いか」というような「やり方」を聞く方が多く、私のことを信頼していただけるのはありがたいのですが、「言われた通りにやりますので」と言われる方も多くいます。これはマンションを購入した時の営業マンが「私」になっただけで、相談される方の意識はまったく変わっていないのです。このため、次に何かあっても誰かに相談して言われるままに行動することになります。私自身もこのように相談した方を信頼し言われるがままに行動したことで何度も失敗を経験しました。
相談をされる方へのアドバイスとしては、相談して言われたことをそのままやるのも良いのですが、なぜそれをやるのかを確認し、自分で判断し考えて行動することが大切です。初めのうちは分からないことが多く難しいかと思いますが、この繰り返しが「自分の考えを持つ」ための大事なプロセスなのです。マンション経営で成功されている方も、最初は素人でみんなこのプロセスを経ているのです。そして大きな成功をされている方は、例外なく自分の考えをしっかりと持っているのです。
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