サラリーマン大家

                  <実録>不動産ファンドに騙された!!(告訴)

不動産投資ファンドへの誘い

■営業マンが訪れる

サラリーマン大家

不動産会社のA社で物件を購入した私に、営業マンがお礼を兼ねて耳よりな情報をお伝えしたいと連絡がありました。 数日後、営業マンと会うと資料を出してこんな説明を始めました。 「うちでは東京スカイツリーの近くに3階建てのマンションを保有しており、これがとても高い利回りで運用できています」。 資料にはマンションの写真と地図が記載されていました。地図を見ると確かに東京スカイツリーの近くでかなり条件の良いところです。 そして写真にはその会社の看板を掲げた3階建てのマンションが掲載されていました。 営業マンは図面を広げて説明を続けました。「このマンションの隣の敷地も弊社の保有で、ここに10階建て延床面積771㎡のマンションが1年後に完成します」。 図面には運用中のマンションの横に建設中と記載された広い面積の敷地があり、 10階建てのマンションの詳細情報や完成後のイメージ画像もありました。

A社はそれほど大きな規模の会社ではありませんでしたが、この話を聞いて「やっぱり不動産会社は儲かるんだ」と思いました。 後になって振り替えると、そんなはずは無いと疑うべきだったと後悔しています。



■不動産投資ファンド

サラリーマン大家

営業マンは図面を広げたままでこんな話を始めました。 「マンション建築にあたり弊社でファンドを用意しましたのでご紹介させて下さい。」

・弊社の特別なお客様だけにご紹介する特別なファンド

・ファンドで資金を預かる期間はマンション完成までの1年間

・マンション完成の1年後、元金に10%の配当金を上乗せして配当

・期間中に不動産購入で資金が必要な場合は弊社が低金利で貸付け

私はこの説明を他社で不動産を購入させないための「顧客の囲い込み」のファンドと理解しました。 1年間で10%上乗せは悪い話ではありません。 そして新たな不動産購入も大きな買物の予定も無かった私はこの話に乗ってしまったのです。



■ファンド申込みから1年後

サラリーマン大家

ファンドを申込んでから間もなく1年という頃に営業マンに連絡を取ると「マンションの完成が延びている。もう少し待って欲しい」とのこと。 1か月後に連絡しても同じ回答です。このやり取りが数か月繰り返されました。

■更に半年後後

営業マンとのやり取りに業を煮やした私はA社に説明を求めました。 A社を訪れると会議室に通され、社長が現われて説明を始めました。 「実はマンションは完成しています。 しかし建築を行った会社がマンションの引渡し手続きを行わないため販売できない状態です。 引渡されたらすぐに販売できファンドも返金できます。 弊社も困っており法的手段に訴える準備をしているのでもう少し待って下さい」。 そして初めて会ったこの年配の社長は私に対し深々と頭を下げたのです。

この誠実な対応を受け「この社長なら時間がかかってもきちんと返金してくれる」と信じてこの日は帰りました。


独自に調査を開始

■湧いてくる疑問点

サラリーマン大家

しかしながら落ち着いて考えると何かうまくかみ合っていない気がしてなりません。

マンションを建てた建築会社が完成したにもかかわらず依頼主に引き渡さないということがあるのだろうか。A社もマンションの収益が半年間も回収できていない状況で、まだ法的手段に訴える準備とはあまりに遅いのではないか。そう考えるとすべてが疑わしくなってきました。そもそも不動産会社が儲かるとしてもあの会社の規模で東京スカイツリーの近くにマンションを建築することが出来るのだろうか。


嫌な予感が私の頭をよぎり、熟考した末、事実を確認するための行動を開始しました。





サラリーマン大家

■運用中のマンションの看板を確認

まず運用中のマンションの看板から調べることにしました。現地に赴き改めて確認したところ、確かにA社の名前と会社のロゴの入った看板が付いており、A社の保有するマンションに間違いはないようです。

■運用中のマンションの登記を確認

念のため更にマンションの登記権利証を入手しました。登記権利証は現在のオーナーだけではなく、建物が出来てからのすべてのオーナーが記載されています。しかしA社も社長の名前も記載がありません。

私は完全に混乱しました。なぜあのマンションはオーナーでもないA社の名前の看板を掲げているのでしょう。謎は深まるばかりでした。



■管理担当の社員に探りを入れる

サラリーマン大家

看板の謎を解きたく、A社で物件の管理を担当している社員を食事に誘いました。まず確認すべきはこの社員がファンドの件にかかわっているかです。軽く話をしてみると無関係であることがすぐに分かりました。次に東京スカイツリーの近くのマンションの話をしてみると、私の知りたい情報をすべて教えてくれました。マンションは土地の売買の仲介だけであったが、その縁で管理を任せて貰った。その際にオーナーに頼み込んで会社の名前の入った看板を付けさせてもらったとのことです。


これで管理しているマンションに自社の看板を付け、自社保有のマンションと偽っていたことが判明したのです。

また、この社員の話からA社の経営は事務所の家賃も滞納している状況と分かりました。



■建築会社の社長に聴き取り調査

サラリーマン大家

次に調べるのは新たに建築したマンションとA社の関係です。 貰っている土地や建物の図面を見直してみましたが、何度見ても本物で疑う余地はありませんでした。そこで図面に記載されている建築会社に連絡を取りました。最初に社員の方に状況を説明しましたが、まったく話が通らず、最終的に社長が登場して、ようやく話の顛末が判明しました。

A社には今回、土地売買の仲介を依頼したので図面を渡しているが、マンションの建築にはかかわっておらず、資本面での権利も一切ないとのことでした。


これですべての疑問が解決しました。同時にファンドがすべて偽りであり不動産投資詐欺に騙されたことが確定し、暗澹たる思いに捕らわれました。

東京地検 特捜部に告訴!!

■資金を回収する方法を考える

サラリーマン大家

ファンドが詐欺と判明したので、資金の回収をするための次の一手を考えました。

通常の手順であれば警察に被害届けを出すところですが、ファンドの契約書の記載にA社がマンションのオーナーであるといった記載はなく、契約書だけで詐欺と判断するのは難しいため、何度も取り調べが必要ではないかと推測されました。そうなるとサラリーマンの私は自分の会社に不動産投資活動が知られてしまう恐れがあります。民事裁判も考えましたが、A社が経営難のため勝訴しても資金回収できそうにありません。

残る手段は社長と営業マンを相手に刑事訴訟を起こし示談に持ち込んで 個人資産で回収するしかないと考えました。 しかし刑事訴訟をどう進めたら良いか分からない私は、途方に暮れるばかりでした。




■元 特捜部エースのT氏が登場

サラリーマン大家

騙されたことが確定してから半年程過ぎた頃、私はとある大家の会に参加しました。ここで知り合った方にファンドの件を相談したところ「うちの奥さんのお義父さんが元検事と知り合いなので紹介できるかも」とのこと。そして後日、T氏を紹介して頂きました。驚いたことにT氏は元東京地検 特捜部のエースで執筆した本がベストセラーになったこともある程の方でした。

弁護士事務所でT氏とお会いし相談したところ、刑事告訴しても十分に勝訴できるだろうとのことでしたので、T氏に対応をお願いしました。

■東京地検 特捜部に直接告訴

告訴に向けた準備が始まりました。まずは弁護士事務所に赴き状況の顛末を詳細に説明し、この説明を元に「供述書」が作成されました。次に供述書に沿ってファンドの契約書や不動産会社から入手したマンションの土地や建物の図面といった「証拠品」を提出しました。最後に出来上がった「告訴状」を弁護士が読み上げて誤りが無いことを確認し署名・捺印して完成です。

そしてこの告訴状が東京地検特捜部 直告係へ提出されたのです。

その後

サラリーマン大家

■T氏のその後

特捜部に告訴状が提出されてちょうど2ヶ月目、T氏の訃報をニュースで知りました。実はT氏は壮絶ながんとの闘病中だったとの事でした。人生の最終章に、苦しい表情を見せることなく私を励まし告訴に向けて尽力して下さった事を思うと、万感の思いがこみ上げてきました。

■告訴のその後

T氏の訃報から3週間後、特捜部から弁護士事務所に「不起訴」の連絡が入りました。T氏の口添えで実現した特捜部への告訴ですが、T氏の影響力が無くなったことで不起訴と判断されたのかもしれません。

■ファンドのその後

A社は、ある成長株の会社と提携することになり、なんとか経営難を乗り越えました。

そしてA社が経営難から抜け出したことで、私もファンドの元金を80%は回収する事ができました。

騙されて学んだ事

サラリーマン大家

■なぜ騙されたのか?

何よりも一番の原因は安易な儲け話に乗ってしまった事です。冷静に考えてみれば、そんなうまい儲け話があるはずはありません。儲け話の「裏」をきちんと確認しなかったことも問題です。そして、人を簡単に信じ過ぎるところが最も大きな原因だったと反省しています。

■騙されないためには

当たり前の事に聞こえるかもしれませんが、まず儲け話は疑うようにしましょう。また儲け話を持ってくる人も一旦は疑うようにしましょう。そして利益を得たいのであれば、そのためにどうすれば良いかを日頃から考えることが大切だと思います。そうすることで利益を得る事の難しさが分かり、単純な儲け話に騙されないようになると思います。自分を客観視できない人が儲け話にのるのは大変危険です。

■T氏への感謝

騙されてしまったのは私にとって大変辛く苦しい経験ではありましたが、T氏のように人生の最期まで人のために尽力して下さる方と出会えたことは私にとって大きな救いとなり、世の中は騙す側の人間だけではないと改めて実感することができました。T氏から受けたご恩を私も少しでも還元できたらと思い、不動産投資をされている方のために何かしたいと考えました。それが、この「切磋琢磨サイト」の活動につながっています。

次の「騙された!!」シリーズ

inserted by FC2 system