マンション売却の教室

第1話 サラリーマンの私が始めたマンション経営

サラリーマン大家

こんにちは。サラリーマン大家の良波直哉と申します。
私は、普段は大手の電機メーカーで働くサラリーマンですが、会社の仕事とは別にマンション経営を行っています。
このコラムでは、サラリーマン大家である私の経験や成功事例、これまでに受けた相談事例など、サラリーマンのマンション経営に焦点をあててご紹介したいと思います。

■ はじめに

私がマンション経営に興味を持ったのは10年ほど前でした。昼休みに書店で1冊の本を立ち読みしたのをきっかけに、サラリーマン生活の不安定さとリスクに気付かされ、自分と家族の将来のためにとマンション経営を始めたのです。
しかしサラリーマンが思い立ってマンション経営を始めてもうまくいくはずがありませんでした。営業マンに勧められるままにマンションを購入してしまい、その後すぐに退去となってしまいました。持ち出しが数ヶ月間続くなど苦しい経験の果てに、安易にマンション経営を始めたことを悔やみました。 しかし、その苦しい経験と真正面から向き合い、ひとつひとつ乗り越えていくことでマンション経営というものが自分なりに少しずつ分かってきました。
そして私と同じようにつらい思いをしているサラリーマン大家さんが実はたくさんいることに気づきました。その多くは、問題が起こっても解決するノウハウがなく相談する人もいないためひとり悩んでいるのです。そこで、そんな困っている人たちのために何かできないかと考え、個人で「切磋琢磨サイト」というホームページを開設して、失敗や騙された経験など自分のマンション経営のすべてを赤裸々に公開することにしました。そのサイトを見た人たちからマンション経営の相談をしたいという連絡が来るようになり、私自身の経験と勉強のためにも無料で相談を受けるようになりました。

 第1話:サラリーマンの私が始めたマンション経営
 第2話:営業マンから勧められるままに購入したマンション
 第3話:成功しているサラリーマン大家さん2人の実例
 第4話:サラリーマン大家さんからの相談ごと
 第5話:マンション経営の新たな始まり

今回のコラム第1話ではサラリーマン人生に不安を感じ、副業としてのマンション経営に興味をもった私がマンション経営のセミナーに参加し、なぜ営業マンに勧められるままにマンションを購入してしまったのかお話しします。


■ サラリーマン人生はリスクだらけという気づき

サラリーマン大家

・順風満帆なサラリーマン人生
40歳を過ぎた頃の私は電機メーカーでエンジニアとして働き、やりがいのある仕事で何の不満もありませんでした。家族は妻と2人の子どもの4人家族で、休日は庭で趣味のガーデニングに励むという生活で、仕事も家庭も順調でまさに順風満帆、将来も何の問題もなく安泰であると信じ切っていました。

・1冊の本との出会い
私の職場が入っているビルの1階には大きな本屋が入っており。昼休みはそこでよく立ち読みをしていました。当時は投資や財テクなどにはまったく興味のなかった私ですが、ある本のタイトルが目に入り何気なく手に取ってみました。それはロバート・キヨサトの「金持ち父さん、貧乏父さん」でした。当時の私は大きな衝撃を受けました。正直なところ自分は「金持ち父さん」のほうに分類される側だと思っていたのです。しかし読み進めていくとこれまでの自分の人生観がたちまちにして打ち砕かれ、自分は「貧乏父さん」であると思い知らされました。
この本の良し悪しは賛否両論あるようですが、当時の私には立ち止まって考えてみるきっかけになりました。

・自分と家族の将来を考えてみる
「金持ち父さん、貧乏父さん」を読んだ私がまず実行したのは、自分と家族の将来がどうなるかを人生の時間軸に合わせて考えてみることでした。
私のサラリーマン人生は60歳で定年を迎え年金がもらえるまでの5年間は何らかの仕事で食いつなぐことになります。そして65歳でリタイアしますが、平均的には75歳で要介護になり男性は80歳ほどで天寿を迎えることになります。しかも定年を過ぎても、家の修繕費・車の買い替え・子どもの結婚・親や自分の介護など、出費は増える一方です。しかし収入は減る一方なので、お金がいくらあっても足りません。また何歳まで生きるか分からないので預金を使い果たすわけにもいかず、結局は最期までお金に縛られる人生です。
サラリーマンであっても定年まで働けるという保証はありません。最近では大手企業が倒産することもありますし、倒産しないまでも業績不振によるリストラや病気や怪我、ハラスメントなどで働けなくなる場合もあります。
そう考えるとサラリーマンの人生はリスクだらけで、砂上の楼閣のようなものだと気が付いたのです。そして家族の幸せを守るためにも、会社以外の安定した収入が必要であると考えました。


■ 会社以外の安定した収入を得るには

サラリーマン大家

会社以外の安定した収入が必要なことは自覚しましたが、そもそもサラリーマンである私がどうすればそのような収入を得られるのかは、簡単にはいかない問題です。また会社での仕事があり時間が限られるため、自分の労力を掛けずに得られる収入、いわゆる不労所得でなければなりません。
サラリーマン一筋で働いてきた自分が、本当にそんな収入を得ることができるのか。正直なところ自分でもわかりませんでしたが、何もしないよりはましという程度に考え、可能性を調べてみました。

不労所得の中でもサラリーマンが副業として可能なものにしぼって調べたところ、 証券投資・ ネットビジネス・フランチャイズビジネス・ マンション経営などがありました。しかし確実に利益を出すのが難しい・多くの労力を要する・初期投資の準備が困難など、ほとんどが候補から外れました。そして唯一残ったのがマンション経営でした。


■ マンション経営の勉強を開始

サラリーマン大家

・マンション経営の市販本で学ぶ
そしてマンション経営の勉強を始めました。特にサラリーマン大家さんが出している本は大変参考になりました。未来の自分の姿とオーバーラップさせてワクワクしたものです。また、DIYで物件を自身で管理している大家さんの本では、クロスの張替えや棚などの造作を自身でまかなってしまう方もいて、DIY好きの私としては管理にチャレンジする自分の姿を思い浮かべたりする日々でした。

・昼休みの立ち読みで得られるもの
マンション経営の勉強をし始めると、もっと広い視野での知識が必要と考えるようになりました。そこでビジネスのハウツー本や成功者の事例、やメンタル強化など広いジャンルの本をよむようになりました。ユダヤ人の教えを説いた本や世界中で活躍している華僑のノウハウをまとめた本は投資やビジネスを学ぶという意味で大変参考になりました。
また立ち読みで読めるのは十数ページ程度と少ないのですが、1度に読む範囲が狭いためあとで内容を詳細に思い返し自分の考えをまとめることができ、理解がより深まりました。また思い返すことで記憶に深く刻まれるのです。振返って考えてみると、書かれている内容を一方的に受け入れるのではなく、その内容について自分なりの考えを持つということもこの立ち読みで学んだのかもしれません。そしてこの「自分なりの考えを持つ」ということがマンション経営ではとても大切なことなのです。

・マンション経営のセミナーで学ぶ
不動産投資について色々と調べている中で、不動産会社が主催しているマンション販売のセミナーが数多く開催されていることを知り、私も勇気をもって参加してみました。セミナーに私のような初心者もいれば、すでにマンション経営を始められている大家さんもいて、講師に質問をする大家さんを羨望の眼差しで見ていたのを憶えています。しかし、正直なところセミナーで話を聞いても、どのようなマンションが良く、どの会社に購入の相談をして良いのかはわからない状況でした。


■ マンション購入に向けて動き出す

サラリーマン大家

マンション経営にチャレンジすることは決めていた私でしたが、何を基準に選べばよいのか、購入するために必要な手続きは何なのか分からないことだらけでした。このため実際のマンション購入はいつになるのか自分でもはっきりとは決めかねていました。そこでまずは勉強と思いマンション経営のセミナーに足を運んだのです。

① セミナーの個別相談はまるで霊感商法
多くのセミナーでは最後に個別相談の時間が設けられており、横に営業マンが座り、会社名や年収、家族構成、持家の有無などを聞かれます。その質問に答えると営業マンは1枚の紙を差出しおもむろに言います。 「あなたにピッタリのマンションはこれです」
この言葉を初めて聞いた時は「霊感商法か!!」と突っ込みたくなりました。

個別相談とは、専門家からどのようなマンションを購入したら良いのか・購入した後に大家としてすべきことは何かなどのアドバイスをもらえるものだと私は思っていました。しかし実際には年収や保有資産を聞かれて、一方的にマンションを紹介されただけでした。私は思っていた内容と違いがっかりしました。 その後もいくつかのセミナーに参加しましたが、どの会社も似たり寄ったりのスタイルで、私としても先に進めずどうしたものかという状況になっていました。

② 信頼できると思った営業マンとの出会い
本格的に不動産の勉強を初めて半年ぐらい経った頃、あるセミナーで個別相談ではなく懇親会と記載のあるものを見つけたので参加してみました。セミナーの内容はマンション経営のメリットやリスクなどを初心者目線で解説しておりとても分かりやすくて、他の会社のようなマンションの紹介をするだけのセミナーとはまったく違うものでした。その後に行われた懇親会は講師・参加者・営業マンが近い距離で気軽に話ができ、良い雰囲気でした。
そこで出会ったひとりの営業マンの話は、購入後の運用や、5年後・10年後にどうなるか、出口対策はどう考えるべきかなど、アドバイスが具体的で「この人の話は信頼できる」と直感的に思いました。そしてどのようなマンションを購入すれば良いのかについて相談するならこの人をおいて他にはいない!と思ったのです。

③ 営業マンに相談に行く
アポを取り相談に赴くと年収や勤続年数は事前に伝えてあったので話はスムーズに進みました。その営業マンはマンションだけではなく銀行の融資や税金にも精通しているようで、私はさらに厚い信頼を寄せるようになり、この人にすべてを任せてみようという気持ちになりました。
後になって振り返ってみれば、営業マンが融資や税金について詳しいのは当たり前なのですが、当時の私はそのようなことも知らなかったのです。

その営業マンはマンションの情報が記載されたマイソクと呼ばれる物件情報の紙の中から何枚かを選び説明を始めました。しかし言葉の意味は理解できてもマンションの良し悪しを判断できない私は、仕方なく「利回りの高いもの」を数枚選びました。すると営業マンがその中の1枚を示して「試しに一度見に行ってみましょう」と言いました。

④ マンションを現地に見に行く
そこでその週末に営業マンと一緒にマンションを見学に行くことになりました。そのマンションは駅から10分ほどの距離にある12階建のマンションでした。築年数の割にはきれいで管理が行き届いていることが良く分ります。今回紹介を受けている部屋は入居中ですが同じ間取りの部屋が空いており見せてもらうことができました。一人暮らしには手ごろなワンルームで、壁や床は新築のように綺麗でしたがキッチンは年数が経過していることが一目で分かりました。しかしこのマンションを購入して大丈夫なのか、この時点では私には判断できませんでした。

営業マンからは「私は一生付き合える人にしか売りたくないので是非あなたに購入して欲しい。でも他からも引き合いがありますので、待てるとしても1週間です」と言われました。
この日から1週間、買うべきかやめるべきか、私の苦悩の日々が始まりました。


■ マンションを購入するまでの苦悩

サラリーマン大家

・苦悩の日々となる理由
なぜ苦悩の日々となったのか、その理由は3つありました。
まずは購入するマンションの良し悪しについての自分の考えが確立されてなかったため結論を出せなかったのです。
次に営業マンを信頼し過ぎていたことです。現地まで足を運んでもらったのに買わないとなると、もう相手にされないのではという不安がありました。
しかし最も重要なのは相談できる人がいなかったことです。副業禁止のため上司や同僚には相談できず、妻もマンション経営には無関心なのでひとりで悩むしかありませんでした。


■安易なマンション購入のプロセス

サラリーマン大家

マンションを購入すべきかどうかの判断に悩みつづけて苦悩の1週間を過ごしましたが、実は自分の気持ちは最初から「マンションを購入する」で決まっていたのです。そして「自分と家族の将来を思い起こす」や「リスクを整理して向き合う」といったことでマンションの購入を正当化し自分を納得させていたのです。なぜなら、この時の私は「マンションを購入するしかない」という気持ちで冷静な判断力を失っていました。これは後で振り返って気づいたことですが、真面目なサラリーマンがマンション経営を勉強しようとすると、安易にマンションを購入してしまう流れがあり、私はこの流れに陥っていたのです。そしてこの流れに陥るとまるで週末のショッピングのようにマンションを購入してしまうのです。私はこれを「安易なマンション購入のプロセス」と呼んでいます。

この状況に陥りやすい人物像としてはこのような方です。
 - 大手企業の真面目なサラリーマン
 - ある程度の収入がありそのことにプライドを持っている
 - 会社や家庭など周囲の人は「良い人」であることが多く、人を疑わず信じてしまう傾向が強い
 - 学習意欲が大きくマンション経営に興味を持ってセミナーなどにも参加している

最も大きな特徴は、マンション経営をしている人に知り合いがおらず、会社にも秘密で家族はマンション経営に興味がなかったり否定的だったりするため、だれにも相談できずひとりで行動している点です。 そして、いつの間にかマンションを購入してしまっている、このからくりは次のようになっています。

① マンション経営のセミナーに参加する
セミナーは売る側と買う側のマンション売買の関係者だけで成り立っています。そこでの講義の内容は「成功するためのマンションの紹介」など、マンションを購入するとこんなに良いことになるといった内容が主になります。また、多くの場合ではセミナー会場という閉鎖的な空間で開催されています。これは一種の集団催眠のようなもので、購入するのが当たり前だという感覚に陥ってしまいます。
セミナーはマンション経営者の卵が集まる「巣」であり、教える側の会社は「親鳥」です。 卵からかえった雛が最初に見たものを親と信じてしまうように、無意識のうちにセミナー参加者も親切な営業マンを無条件に信頼してしまうのです。

② マンションの紹介を受ける
「このマンションは利回りが高く、こちらのマンションは駅近です。どちらにしますか」と営業マンが物件の紹介を始めたとします。これはマーケティングで使われる心理学的な手法ですが、お気づきでしょうか?
例えばデパートの靴売り場で「黒の靴は落ち着いて見えますし、茶色の靴は今お召しになっているコートに合いますが、 どちらになさいますか?」と提案し「買わない」を選択肢から除外する手法です。 この話法を不動産会社の営業マンがどの程度テクニックとして意識しているかは分かりませんが、集団催眠の状態に陥っているこの段階では非常に効果的だと思います。

最後に「こんなマンションを購入できるとは、うらやましい限りです」、「何もしなくても毎月これだけの収入が入りますよ」と持ち上げられ、特権的な立場であるかのような気持ちに導かれます。 そのことにより、さらに「この機を逃してはもったいない」という気持ちになってしまいます。この傾向は、比較的年収の高い方や会社での役職が上位にある方に多いようです。

③ マンションの現地確認
営業マンと一緒に現地へマンションを見に行きますが、「さあ、どうぞ見てください」と言われても、いったい何を見て良いのかわかりません。マンション経営の経験の無いサラリーマンには確認すべきポイントなど、経験値も知識もないからです。営業マンに気になる点を指摘しても、想定される質問と回答は事前に準備済です。 相手は百選練磨のプロですから、素人のサラリーマンがかなうはずがありません。

④ マンションを購入
そして最後は「こんな素晴らしいマンションのオーナー様とはうらやましい限りです」と決めゼリフでおだてられてしまい、そのままマンションを購入してしまうのです。

安易なマンション購入のプロセスは、パターンの違いこそはありすれ、大概はこのような流れであることが多いように思います。
それでは、ここで登場人物を振り返ってみましょう。当の購入検討者以外はすべて「売る側の人間」です。
  セミナー講師(不動産会社の関係者)
 - マンションの紹介(不動産会社の営業マン)
 - マンションの現地確認(不動産会社の営業マン)

セミナーで集団催眠の状態に陥り「マンションを買う」のが当たり前となった状態から、マンション紹介・現地確認に至るまで、売る側の人間しか登場してこないのです。 セミナーからマンション購入まで何らかの形で催眠状態の影響下におかれてしまうことになり、これが「安易なマンション購入のプロセス」の正体だと思っています。
この状態に陥ると営業マンから勧められるままにマンションを購入してしまい、後になってから、どうしてこんなマンションを買ってしまったんだろう、と後悔してしまうのです。

・安易なマンション購入のプロセスに陥らないために

最大の対策としては、まずは家族(特に既婚者の方は奥様がベストです)に話してみましょう。 相手はマンション経営を理解していないので説明しても無駄などと思ってはいけません。 本当に良いマンションであれば自信を持って説明でき、家族の方からも支持されるはずです。きちんと説明できないマンションは購入すべきではないでしょう。意外にこのポイントが「買っても大丈夫なマンションかどうか」を見分ける目安にもなります。奥様であれば、普段の日常で家事育児などに多くの時間を割いているので、生活者としての視点でマンションを評価することができるからです。
またできることなら「売る側」の立場ではないが不動産に関しての経験値がある人に相談し、現地確認への同行などをお願いできたらよいでしょう。 そのためにはマンションを購入する前にマンション経営の経験がある人との出会いを心がけたり、交流を持つようにすることが大切です。
少なくともマンションを購入される前に一度立ち止まり、「売る側」以外の人と一緒に客観的な見直しをすることが大事だと思います。

サラリーマン大家


今回のコラムでは、普通のサラリーマンだった私がマンション経営に興味を持ち、マンション経営のセミナーに参加した結果「安易なマンション購入のプロセス」の流れにのってしまい、冷静な判断力を失い営業マンに勧められるままにマンションを購入してしまったところまでをご紹介しました。
次回のコラム第2話ではこの続きとして、大家としての経験どころか心構えすら無かった私が安易にマンションを購入してしまい、サラリーマン大家としてどのようなつらく苦しい思いをすることになったのか、その実体験を赤裸々にご紹介するとともに、営業マンが勧めやすいマンションとはいったいどのようなものなのかを営業マンの気持ちを踏まえ解き明かしていきたいと思います。

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